ハローワークでもらえるお金は、失業保険(正式名称は「雇用保険の基本手当」)だけではありません。例えば「仕事でさらなるスキルアップをしたい」「納得できる仕事に就くためにしっかり求職活動がしたい」という場合、ハローワークに申請すればお金がもらえるケースがあるのです。知っておくと得する、ハローワークからもらえるお金について解説します。
給料の5~8割! 「雇用保険の基本手当」で求職中の生活費をカバー
まず、ハローワークからもらえるお金の代表格といえる「失業保険」(雇用保険の基本手当)からご紹介いたしましょう。会社を辞めて転職活動をしている間に支給されるお金で、求職中の経済的な負担を軽減してくれます。
雇用保険の基本手当の金額は、前職の直近6カ月の給料を180日で割って日額を計算し、その50~80%となります。給料が多かった人ほど50%のほうに近く、少なかった人ほど80%のほうに近い支給率になります。
この基本手当がもらえる日数は、勤続年数や離職の理由などによって異なります。例えば、30歳で勤続年数8年の人の場合、自己都合による離職だと90日ですが、倒産や解雇など勤務先の都合で離職した人(「特定受給資格者」といいます)の場合だと180日に増えます。
雇用保険の基本手当がもらえる日数(自己都合による離職の場合)
区分 | 被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年 未満 |
1年 以上 5年 未満 |
5年 以上 10年 未満 |
10年 以上 20年 未満 |
20年 以上 |
|
全年齢 | - | 90日 | 90日 | 120日 | 150日 |
雇用保険の基本手当がもらえる日数(勤務先の都合による離職の場合)
区分 | 被保険者であった期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1年 未満 |
1年 以上 5年 未満 |
5年 以上 10年 未満 |
10年 以上 20年 未満 |
20年 以上 |
|
30歳未満 | 90日 | 90日 | 120日 | 180日 | - |
30歳以上35歳未満 | 90日 | 120日 (90日※) |
180日 | 210日 | 240日 |
35歳以上45歳未満 | 90日 | 150日 (90日※) |
180日 | 240日 | 270日 |
45歳以上60歳未満 | 90日 | 180日 | 240日 | 270日 | 330日 |
60歳以上65歳未満 | 90日 | 150日 | 180日 | 210日 | 240日 |
※受給資格にかかる離職日が2017(平成29)年3月31日以前の場合の日数
なお、直前6カ月間のうちに長時間の残業を課せられたことが原因で離職した場合などでも、「特定受給資格者」と認められ、基本手当をもらえる日数が長くなります。真面目な人ほど「退職は自分の責任」と思いがちですが、離職の理由に少しでも疑問を感じている場合は、ぜひハローワークで相談してみましょう。
特定受給資格者の場合、雇用保険の基本手当は申請してから1カ月半くらいで受け取れます。一方、自己都合による離職の場合、3カ月の「給付制限期間」が設けられているので、実際に基本手当がもらえるのは申請してから4カ月程度と遅くなります。こちらも合わせて覚えておきましょう。
仕事のスキルアップに生かせる「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」
「仕事においてさらなるスキルアップを図りたい」と、自らのキャリアプラン実現のために“自己投資”がしたいと考える人も多いことでしょう。そんな場合に活用を検討してもらいたいのが、「一般教育訓練給付金」と「専門実践教育訓練給付金」です。
一般教育訓練給付金

仕事に役立つ資格の取得にかかった費用(講座の入学金や受講料など)の20%が支給されます(最大10万円が上限)。医療事務、調剤薬局事務、簿記、ファイナンシャルプランナー、宅地建物取引士など幅広い分野の資格が対象になっています。
専門実践教育訓練給付金

看護師や介護福祉士、美容師、理容師、調理師などの専門性が高い技能を修得するためにかかった費用(講座の受講料や入学金など)の50%が支給されます(資格を取得した場合はさらに20%上乗せして合計70%)。ただし、支給の上限額は年間40万円(資格を取得した場合は年間56万円)となっています。
「一般教育訓練給付金」や「専門実践教育訓練給付金」の対象となっている講座について調べたい方は、「教育訓練給付制度・厚生労働大臣指定教育訓練講座検索システム」から検索できます。興味のある方は、ぜひチェックしておきましょう。
求職活動にかかるさまざまな費用をハローワークがバックアップしてくれる!
ほかにもハローワークでは、求職活動にかかるさまざまな費用を支給してくれます。
移転費
ハローワークや自治体などが紹介した職業に就くために引っ越しをする必要がある場合、移転にかかる費用が支給されます。
広域求職活動費
ハローワークの紹介により遠隔地にある求人事業所を訪問して面接を受けた場合、交通費や宿泊料が支給されます。
求職活動関係役務利用費
面接を受けたり、教育訓練を受講するために子どもが保育サービスを受けた場合、保育サービスにかかった費用の一部(上限額あり)が支給されます。
知らないと損!申請するだけでもらえるお金は他にもたくさんある
いかがでしたか? なかには「まったく知らなかった……」という制度もあったのではないでしょうか。このように「申請するだけでもらえるお金」というのは、知らないと損することが多いものです。そしてそれは、今回ご紹介した制度以外にも、たくさん存在します。
こちらの記事ではその他の色々な制度を詳しくご紹介しています。ぜひご覧ください。
関連情報
今回、執筆いただいたのは
ファイナンシャルプランナー・風呂内亜矢さん
1級ファイナンシャル・プラニング技能士、CFP®認定者、宅地建物取引士、一般社団法人 全国銀行協会 金融経済教育活動懇談会委員
26歳の独身の時、貯金80万円でマンションを衝動買いしたことをきっかけに、お金の勉強を始める。その後マンション販売会社に転職し、エリートビジネスマン3000人以上のお金の使い方をヒアリング。現在は夫婦で合計4部屋の物件を保有し、賃料収入も得ている。著書に『その節約はキケンです—お金が貯まる人はなぜ家計簿をつけないのか—』(祥伝社)、『図解でわかる! 確定拠出年金』(秀和システム)などがある。