第1回住宅ローン返済「無料セミナーに行く」の巻
同じスポーツクラブに通う30代の主婦A子とB子。ある日の帰り道、A子は情報ツウのB子に「住宅ローン返済の見直し」の無料セミナーに誘われ、しぶしぶついていくことに…。

- B子:なんでもその無料セミナー、女性限定でおいしいケーキが出るらしいわよ。
- A子:ケーキが目当て?(笑) まあちょうど甘いものも食べたかったし。少しなら付き合ってもいいわよ。
- B子:あなたもローンが残っているでしょう。きっと参考になるわよ。
- A子:そうね、でもお金のことは全部主人に任せっきりだから。わたしにわかるかしら…?
住宅ローン返済の見直し方法は主に3つ

- 畠中:みなさん、こんにちは。今日は「住宅ローン返済の見直し」についてのお話です。突然ですが、ローン返済の見直しには、主に3つの方法があることをご存知ですか?
- まず1つ目は「繰り上げ返済」。これはご存知の方が多いと思います。当初の返済時期より早く、前倒しで返す方法です。
- 2つ目は「借り換え」。いま借りているローンをより条件のいいローンに乗り換える方法ですね。
- 3つ目は、一般にはあまり知られていませんが、「条件変更」という方法もあります。月々の返済額を増額・減額したり、ボーナス払いをなくすといった、返済に関する条件を変更する方法です。
それぞれのメリット、デメリットは?
- 畠中:このように、ローン返済の見直しには3つの方法があることがおわかりいただけましたか。では、具体的にどんなメリット・デメリットがあるのか見てみましょう。
繰り上げ返済
たとえば資金に余裕があるときに、100万円の繰り上げ返済したとします。するとローンの元金が減るので、減った分の元金から本来支払うはずだった利息も減ります。さらに返済期間が短縮されるタイプ(期間短縮型)を選んだ場合、当初よりも早く完済できるため、老後の暮らしにゆとりが生まれます。
ちなみに、みなさんが月々支払っている返済金額は、「元金分」と「利息分」の二段階で構成されているのをご存知でしょうか。下図のように、返済当初は利息分を多く支払っています。そのため繰り上げ返済は早ければ早いほど、利息軽減効果が高くなるわけです。
ただし、手元にまとまった資金があるからといって、やみくもに繰り上げ返済するのは考えもの。たとえば中学生以上のお子さんがいるご家庭では、将来の教育費を見据えて、急な出費にも対応できるようある程度まとまった預貯金を手元に残しておくことも大切です。

借り換え
みなさんが住宅ローンを借り入れ、マイホームを取得したのはいつごろでしょうか。経済状況によっては、そのころよりもより有利な住宅ローンが出ている場合があります。そんなときにおすすめしたいのが、「住宅ローンの借り換え」です。
住宅ローンの借り換えの仕組みは、いたってシンプル。今借りている銀行のローン残高を新たな銀行から借り入れ、すべて返し切ります。そして新たな銀行で住宅ローンを組み直すのです。
一見手間がかかりそうですが、長い目で見ればトータルの返済金額を減らせるばかりか、返済期間が数年間短縮できることもあります。
住宅ローンを借り換える場合は、事務手数料、保証料などの諸費用がかかります。そのため将来にわたって得か損かをトータルで考える必要があります。
諸費用としてかかる金額は、金融機関によって異なりますが、これらの諸費用を含めて借りることもできます。その場合、繰り上げ返済のようにまとまった資金を用意する必要がないので、条件さえ整えばいつでも借り換えが可能です。

条件変更
「条件変更」は、ライフスタイルの変化によって返済額を見直す方法です。たとえば家計に余裕が出てきたら、月々の返済を10万円→11万円に増やすことも可能です。これによってトータルの返済金額が減り、返済期間も短縮されます。
しかし金融機関にとっては手続きが煩雑な割にはメリットが少ないこともあり、積極的に情報開示されていないのが現状です。
一方で、勤務先の倒産や病気などで支払いが難しくなった際に、月々の返済額を減らすこともできます(その代わり、返済期間が延びる)。しかしこれはあくまで最終手段ともいえる方法で、金融機関によって応じてくれる要件が異なります。
まとめ
借り換えの効果は長いスパンで考えよう
- 畠中:「繰り上げ返済」はシンプルな見直し方法である一方で、まとまった資金が手元からなくなるというリスクがあります。これから教育費のかかるお子さんのいる家庭では、ある程度の貯金は残しておきたいものですね。
- その点「借り換え」は、手持ちの資金を大きく減らすことなく、一定の効果が期待できます。まだ一度も借り換えをしたことがない方は、ぜひ一度前向きに検討してみることをおすすめします。
次回、「借り換え」にまつわる、さまざまなメリットが明らかに!
第2回 住宅ローン返済「お金の専門家に相談しに行く」の巻に続きます。

教えてくれたのは
畠中雅子先生
ファイナンシャル・プランナー
ファイナンシャル・プランナー CFP 1級FP技能士。新聞や雑誌の連載のほか、テレビやお金のセミナーなど幅広い分野で活躍。教育資金や老後資金計画など生活に根ざしたお金のアドバイスに定評がある。