「はじめての確定拠出年金」のツボ

個人型確定拠出年金(DC、愛称イデコ)という言葉をよく聞くようになりました。「老後資金をためながら現役時代に払う税金を減らせる」というおいしい国の制度です。これまでは企業年金のない会社員や自営業者しか使えなかったのが、法改正で今年から原則的に現役世代の全員が使えるようになりました。
ただしイデコの仕組みにはまだ誤解も多くあるうえ、金融機関選びや賢い受給方法など、知っておくべきツボはたくさんあります。この本ではそうした知識を短時間で理解できるように、新書本の形でまとめました。本の内容をQ&A方式でいくつか紹介します。
制度の意味と効果について
なぜイデコを使うことが大事なのか
老後が「死ぬほど」長くなっているからです。国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2050年時点で半分が生き残っている年齢は男性では86歳、女性は93歳。これに備えるには財政難で実質減額が見込まれる公的年金だけでは心もとない状況です。公的年金に上積みする「私的年金」である確定拠出年金(DC)を有効に使う必要が高まっています。
イデコを使うのと、同じ金額を課税口座の銀行預金するのとでは60歳時点でどれくらい違う?
イデコは掛け金が全額税制上の控除対象になるので掛け金分の税金が軽減されます。運用時も非課税で、受給時も退職所得控除などの税制優遇があります。イデコを使って投資信託で運用して年4%で増やした場合、課税口座の銀行預金に比べ30年なら940万円もの差が付きます。年4%というのは長期では実は難しくないことも本書の後半で詳しく解説しています。

途中で掛け金を変更できるか。運用の対象は?
年に1度変更できるし、休止も可能です。一方60歳になるまでは引き出せません。DCは自分の運用次第で老後の受給額が決まる仕組みで、投信のほか、少額貯蓄非課税制度(NISA)と違って預貯金も対象です。途中で亡くなれば資産は遺族に受け継がれます。こうした制度概要ももちろん詳しく説明しています。
金融機関選びと長期で増やすノウハウについて
口座管理費用の引き下げキャンペーンが続いているけれど、低い金融機関を選ぶべき?
もちろん口座管理費用は低い方が望ましいです。しかし長期で投信で運用する場合、投信の運用コスト(信託報酬)の差の影響の方がずっと大きくなります。口座費用のキャンペーンに過度に引きずられず、その金融機関で信託報酬の低い投信の品ぞろえが多いかどうかを優先しましょう。信託報酬の低い金融機関の例も列挙しておきました。
本当に投信を使って長期で増やせるの?
低コスト投信を使って世界全体に長期投資すれば、平均で年率4%程度の運用は決して難しくありません。「何がいつ上がるか」など考えなくていいのです。ポイントは「長期・分散・低コスト」です。イデコでは運用の知識がとても大切になるので、この本では長期分散投資の基礎と実践的手法も説明しています。
実は重要な受給時の課税と、イデコを最優先で使う対象者について
受給時も非課税なの?
これは実は誤解です。公務員や大企業の会社員など退職金や現役時代の所得が高い場合は、受給時に退職所得控除などの税制優遇枠を超過してしまい、そこそこ課税されます。なるべく課税を少なくするために「もらい方の知識」をシミュレーション方式で詳しく解説しました。逆に言えば、所得や退職金の少ない中小企業の従業員や自営業者は、受給時も控除の枠におさまりまるまる非課税になりやすいのです。イデコの本質は、所得や退職金が相対的に低かった人が所得格差を取り戻すための重要な仕組みでもあるということなのです。
企業型DCの仕組みと賢い使い方について
イデコは本当に現役世代の全員が入れるの?
企業型DCの加入者は基本的にはイデコに入れません。そういう人は企業型DCを賢く使いこなすことが大事です。
企業型DCはみんな同じなの?
企業型DCには原則的な仕組みのほかに、選択制、マッチング拠出などがあります。それぞれがどう違い、メリットとデメリットは何なのかを解説しています。企業型DCの加入者は原則個人型を使えませんが、だからといって悲観すべきではないことがわかってもらえると思います。
最後に
イデコも企業型DCも長い老後を生き抜いていくためにとても大切な制度です。仕組みを十分に理解して賢く使っていただくために、本書がお役に立つことを願っています。
『著者が語る「本のツボ」』は、投資未経験者・投資経験者にとって有益な書籍を紹介する事で、皆様の投資ライフが充実したものとなる事を目的としたコーナーです。