『著者が語る「本のツボ」』は、投資未経験者・投資経験者にとって有益な書籍を紹介する事で、皆様の投資ライフが充実したものとなる事を目的としたコーナーです。

「はじめての確定拠出年金投資」のツボ

本書は、「確定拠出年金」、特に最近注目されている個人型確定拠出年金(愛称:iDeCo、以下同様に称す)を中心に書かれた本です。“最近注目されている”と言いましたが、その理由は、このiDeCoが老後の生活資金作りのための手段としては最強の方法だからです。生保の個人年金保険や数年前に始まったNISAもこのiDeCoには到底かないません。
iDeCoのメリットを詳しく、わかりやすく

ではiDeCoはどこが“最強”なのか?ということを書いたのが本書です。詳細はお読みいただきたいのですが、ポイントは3つあります。まずはじめは積み立てたお金が全額「所得控除」され、税金が戻ってくることです。サラリーマンの方は「所得控除」と言われてもピンとこないかもしれませんが、年末が近づくと会社に提出する年末調整のための書類がありますね。あの申告書に積み立てた金額を記載して会社に提出すれば年末調整で大幅に税金が還ってくるのです。
2つ目のポイントは運用コストの低さです。皆さんの中には株式や投資信託などで資産運用されている人がいるかもしれませんが、資産運用で最も大切なことは実は「運用コスト」なのです。運用コストとは、わかりやすく言えば「手数料」と「税金」です。iDeCoにおいては、積み立てたお金だけではなく、運用の結果出た利益、例えば利息や分配金、値上がり益といったものに対しても全く税金はかかりません。すなわち税金のコストはゼロです。かつ、投資信託を買った場合も購入手数料はかかりませんし、持っているだけで毎年差し引かれる運用管理費用も普通に投資信託を買う場合に比べて大幅に安いのです。
そして3つ目は「老後資金を確実に確保するための優れた仕組み」です。お金を残すために必要なことはとてもシンプルです。「預け入れは簡単に、引き出しは難しく」すればいいからです。iDeCoは銀行口座からの自動引き落とし(場合によっては給与からの天引き)で積み立てができますから、預け入れるのに全く手間はかかりません。そして引き出すのは60歳になるまではいかなる理由があってもできないという仕組みになっています。中途引き出しができないのはデメリットだという人もいますが、そもそもの目的が老後の生活のための資金確保なのですから、むしろ簡単に引き出すことができないことはメリットと言ってもよいのではないかと思います。
本書ではこれら3つのメリットについて詳しく、それでいてわかりやすく書かれています。このように魅力が満載のiDeCoですが、普通の人がこれを使うためには大きな壁が2つあります。それは「どこでどうやればいいのかわからない」ということと「“運用”っていうけど、そんなことやったことがない」ということです。
普通の人が行動するためのきっかけに


そこで本書では、具体的にiDeCoを始めるためにはどうすればいいのか、そしてどうやって金融機関を選べばいいのか、ということについてまずていねいに書いています。これがSTEP1です。次に運用ってどうすればいいのかということをSTEP2で書いています。ここでは私が40年近くにわたって資産運用のビジネスに関わってきた体験から導き出したきわめてシンプルな方法を述べています。
そして最後に実は意外と忘れられがちな「年金を受け取るときの方法」についても紹介しています。本当は“受け取る時”が一番大事なのに、多くの場合、税優遇や運用に関することのみに焦点が当てられ、「給付」についてはあまり語られることがないことからです。受け取り方のバリエーションとそのポイントについて解説しています。
老後の生活を国や会社に頼っていても十分とは言えない時代になりつつあります。そんな時代に向けて普通の人が自分の力で老後資金を作ることの重要性はますます高まると言えるでしょう。本書は、そんな人たちが行動するためのきっかけとして最適の書となることを願って書いたものです。iDeCoの良さを分かっていただき、スタートするためのベストガイドとなれば幸いです。